その男の素性は誰にも掴めない、チャイルディッシュ・ガンビーノ

ビッグネームのリリースや聴き逃せないニューカマーの告知が続く2018年のチャート争いも中盤に差し掛かる中、音楽業界の話題を一色に染め上げるのはチャイルディッシュ・ガンビーノ。彼はどこから来てどこへ行くのだろうか。
多方面に才能を発揮する奇才、Childish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)のディープな話題にダイブしていこう。

“多くを語らない”というエンターテイメント

本名、ドナルド・グローヴァー。俳優、コメディアン、さらにドラマや映画の脚本や監督まで務め、アーティスト、McDJ名義で楽曲のリミックスなどDJ活動もおこなう彼。
彼を語る上で欠かせないのは2018年5月、突如リリースされ世界を震撼させた衝撃作、「This is America」だ。

詳しくはこちらの記事でご覧いただけるのだが、今の話題は「This is America」一色。
この楽曲を発端とした議論が世間では活発化し、人種問題や社会問題に発展。
チャイルディッシュ・ガンビーノ本人の意見を求めている人々も決して少なくない。


そんな中チャイルディッシュ・ガンビーノがテレビ番組に出演し、もちろんインタビュアーはこう訪ねた。
「すごい話題だね。君はネットのそこかしこで行われている議論についてどう思うんだい?」
それに対して彼はこう答えた。
リリースされてからはネットを開いてないんだ。ちょっとでもネガティヴな意見を見ると、傷ついちゃうから。ほら、僕ってすごく繊細な人間だからさ。」

さらに彼のツイッターもリリースに関する告知のみで、更新も止まっている。
彼はこの作品についていつか語ってくれるのだろうか、それとも口を閉じたままなのだろうか。

チャイルディッシュ・ガンビーノのデビューと酷評 そして飛躍

ここで、彼のデビューからの歴史をおさらいしていこう。
ドナルド・グローヴァーのデビューは2006年の大学在学時、コメディ番組への出演だ。

彼が在学していたのはニューヨーク大学。世界の大学ランクの指標であるタイムズ・ハイアー・エデュケーションの大学ランキングでも常にランクインする超名門大学である。

アーティストとしてのデビューは2011年。
アーティスト名である「チャイルディッシュ・ガンビーノ」の由来は、自分の名前を打ち込めば90年代に人気を博したヒップ・ホップ・グループ、ウータン・クランのメンバーのような名前を自動生成してくれるサイト、ウー・ネーム・ジェネレーター
このサイトで実際に「Donald Glover」と打ち込めば、「Childish Gambino」と出てくる。

話が逸れたが、そのような経緯を経てラッパー・シンガーとしてデビューした彼、しかし世間の風当たりは芳しくはなかった。

彼のデビュー・アルバムである「Camp」は、Pitchforkのディスク・レビューでは10点満点中1.6という超低評価を受けた。


もちろん決してアルバムの完成度が低いわけではないが、当時の世間の風向きはコメディアンがふざけた名前でラップをしてる、というようなものであったようだ。

[capbox title=’Pitchforkってなに?’ titlecolor=” titlesize=” titlepos=left titleicon=” titlebold=true titleitalic=false titlepattern=1 bdsize=3 bdstyle=1 bdcolor=” bgcolor=” captioncolor=” captionsize=” id=” class=” style=” plx=’enter bottom delay 0.8s’]1995年にアメリカの高校生ライアン・シュライバーが設立した音楽メディア。現在はマーク・リチャードソンが編集長を務め、世界で最も影響力のある音楽メディアと言われるまでに成長した。 [/capbox]

しかしそうした意見もすぐに覆ることとなる。

ほどなくしてリリースされた二枚目のアルバム「Because The Internet」はなんとグラミー最優秀アルバム賞にノミネートされ、三枚目のアルバム「Awaken, My Love!」も同様にグラミーにノミネート。
中でも収録楽曲である「Redbone」はグラミー主要2部門を含む5部門にノミネート、「最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス」を受賞。確かなルーツと実力を持つアーティストとして世間に認知されたのだ。

作品で全てを語るという美学

破壊力のある曲もあればしっとりとした歌モノもあり、さらにはトラップ・ビートにスキルフルにアプローチするラップまでこなす。

昨年は自身が脚本と主演を務めたTVドラマ「Atlanta」で、ゴールデン・グローブ賞最優秀TVミュージカル/コメディー部門作品賞主演男優賞を受賞するなど俳優としても大活躍。
どれだけ深く潜り込んでも本質はつかめず、興味を湧かせ続ける。チャイルディッシュ・ガンビーノの世界にはそんな魅力がある。

インタビュー映像などでの彼の姿や振る舞いは、フレンドリーながらも非常に寡黙な印象を受ける。自分の心に秘めた思いを決して大仰に語ろうとはしない。
しかし、彼が生み出す数多くの作品達からは痛烈なメッセージと彼の叫びを感じずにはいられない。
あなたも謎と刺激に溢れたチャイルディッシュ・ガンビーノの世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。

Chita
DEEP DIVER編集部の中では珍しい真面目なライター。海外での活動経験を生かして洋楽系の記事を寄稿している。音楽はトロピカルハウスやアシッドジャズなどを好み、海外のカルチャーへの愛と造詣が深い。最近ハマっているのはバチェラー・ジャパンとゲーム・オブ・スローンズ。