サムライギタリストの並々ならぬこだわり

1981年9月14日生まれのシンガーソングライター・ギターリスト「MIYAVI」。ピックを使わずにギターを叩くように演奏するスラップ奏法で名を上げた通称”サムライギタリスト”。

via: Instagrammer News

ルーパーを使用しての一人多重演奏と、スピード感あふれるパーカッシブなスラップ奏法を巧みに操り、30ヶ国以上を回る4度のワールドツアーを成功させた彼は、自身が使用する機材にもやはり並々ならぬこだわりを持っています。

通常アーティストではなく舞台袖のローディーやPAが行う作業までリアルタイムで演奏しながら一人でこなし、ギターのサウンドを足元のエフェクターでループし多重録音・再生するだけでなく、KAOSS PADという特殊なタッチパッド付きのエフェクターを使い音色を変化させたりしてしまいます。そんな彼はギターに関して、あまりフレキシブルに曲ごとに使い分けるようなタイプではなく、むしろ自分の相棒かのように決まったものを使うタイプなのですが、最近その相棒とも言えるギターに変化があったので、彼の音楽性の変化とともにその理由を読み解きながら時系列にご紹介しようと思います。

Taylor T5

via: VKH PRESS

アメリカのアコースティックギターシェアNo.1ブランド「Taylor(テイラー)」の最も特徴的なモデルT5。

MIYAVIといえばT5、T5といえばMIYAVIのイメージの方も多いのではないでしょうか?MIYAVIがデビュー当初からもっとも長く使用しているギターです。アコースティックギターともエレクトリックギターとも言える独特のアイコニックなデザイン、ネックジョイント部とブリッジ側のスタックハムの2種類のハムバッカーとDYNAMIC BODY SENSORという特殊なピエゾタイプのピックアップを持ち、5WAYスイッチにより幅広いサウンドメイキングを可能としています。

MIYAVIはアコースティックギターを使う際はTaylor 616ceを使い、何度もTaylorの本社工場を訪れるなどTaylor社との交流が深く、エンドース契約が切れる以前には幾何学模様のシグネイチャーモデルも製作されていたようです。

デビュー当初からのMIYAVIの最大の武器である全弦1音下げ、6弦解放のDのコードで繰り出される超絶スラップは、T5の構造上のアドバンテージ(ピックアップとピックガードの位置関係が、プルとサムピングの動作を詐害しないようフラットで広く用意されている)があってこそのものでしょう。

LsL INSTRUMENTS T-Bone シリーズ

長年使い続けてきたT5に別れを告げたMIYAVIが次に選んだのはテレキャスタータイプでした。

この頃(8thアルバム”The Others”)から、これまでの一見完成されていたようの見えるMIYAVIの音楽性に変化が見られます。

これまでのアグレッシブでパーカッシブな”絶対スピード主義”とも言える複雑で込み入ったテクニカルなサウンドから、より大きなステージを意識したシンプルでマッシブ、何よりもリスナーの心の芯に響くサウンドへと進化を遂げます。

アメリカで現地のディーラーと共に数多くのギターショップを巡り、相当な量のギターを弾いた中で彼が選んだのは本家Fenderではなく、Fenderのヴィンテージタイプを元に一本一本クラフトマンの手作業で作られる「LsL INSTRUMENTS(エルエスエル・インストゥルメンツ)」でした。

本人曰く、

“より聴く者のハートに近いサウンドを出せるのが、テレキャスターだった”

そうで、長年の相棒との別れに多くの不安を抱えながらもソリッドギターの始まりでもあるテレキャスターを次の相棒として迎えたようです。

MIYAVIが使用していたLsLのテレキャスタータイプのブラックとホワイト2種類を、見た目以外の微妙な仕様の差を含めてご紹介します。

T-Bone Maple Custom (Black/Charlie Christian P.U)

via: SXSW.com

フロントピックアップに採用されているLollar社のCharlie Christianと、T5同様のブラックを基調とした端正なルックスが特徴です。なぜ今までこのカスタムが流行らなかったのかと疑問に思うほどテレキャスターのフロントにぴったりのCharlie Christianから発せられるファットで抜群のサスティーン感のサウンドは8thアルバム「The Others」で聴くことができます。

T-Bone Maple Custom Vintage Cream (White Blonde)

こちらは目立つカスタムのないオーソドックスなテレキャスターに見えますが、ステンレスフレットやこのモデルの為にハンドセレクトされたフレイムネックなど、随所にクラフトマンのこだわりが伺えます。ステンレスフレットとLsLオリジナルのハンドワンド(手巻き)ピックアップの組み合わせが、MIYAVIが求めた”Bite感”を生み出しているようです。

Fender Telecaster シリーズ

これまで王道エレキギターブランドを選択することなく進んできたMIYAVIが9thアルバム「Fire Bird」を契機に、ついにソリッドギターの始祖である”Fender(フェンダー)”を選んだ理由は何なのでしょうか…

これは憶測の域を出ませんが、やはり最新シリーズFender American Professionalなどを見るに、フェンダー社は古き良き時代を重んじながらも一貫して工業製品としての性能を重視し、進化をやめないブランドであるところがMIYAVIの音楽性をマッチしたのではないでしょうか。

あらゆるミュージシャン、楽器メーカー、クラフトマンに影響を与え、1964年のCBS社による買収から現在に至るまでエレキギター業界の最前線で戦い続け、さらに2017年現在も進化することをやめないFender社の姿勢は、過去にすがることなく進化し続けるMIYAVIのスタイルと通ずるものがあったのかもしれません。

Fender American Vintage Hot Rod ’60s Telecaster

Fender社の割と低価格なモデルです。フィンガリングのいいコンパウンド・ラディアス指板と、通常テレキャスターにはないセンターピックアップがあることが特徴です。

Fender 1964 Miyavi Custom Telecaster

via: THE FASHION POST

via: EQUIP BOARD

Super-Vee Maverick Tremolo SystemとFernandes Sustainer FSK-401-Basic Pickup を搭載したMIYAVI専用モデル。9thアルバムのタイトルソング「Fire Bird」のギターソロなどで、テレキャスターにも関わらず無限のサスティーンがベンドする特徴的な音が使われています。

Fender / MIYAVI x TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. オリジナルギター

Fender / MIYAVI x TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. オリジナルギター 

すべてのパーツが〈タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)〉によるオリジナル仕様となっており、ボディ側面にはカービングの施された継ぎ目のないレザーが埋め込まれ、15周年を記念したソロイストオリジナルデザインのコインが一周にわたり打ち込まれている。さらにダイヤルにはオニキスが埋め込まれ、ネック部分にはコラボ名が美しいシェルで刻印されておりステージライトの入射角に応じて刻々とそのギラつきを変化させ、ピックガードはスケルトン仕様でサステイナーの基盤が透けて見え少年心をくすぐるデザインとなっており、さらに2mmの厚さの側面を凹凸加工にしているため、こちらもステージングの際浴びた照明をきらめくように反射させるよう従来のギター製作では考え得なかったファッションブランドならではの見え方に対する工夫がなされている。
また、ギターを収納するハードケースも持ち手部分が真鍮のオリジナル仕様で、さらにストラップもオリジナルレザータイプとなっており勢の限りを尽くしたこれ以上ないスペシャルな一式となっている。

–  MIYAVI 15周年特設ホームページより –

MIVAVIの最新作、三浦大知とのコラボレーションで話題の「Dancing With My Fingers」で使用されているのこのギター、デザイナーの宮下貴裕のこだわりが随所に見受けられるゴージャスで遊び心満載のカスタムギターです。詳しくは特設サイトの方でご覧になれますが、サスティナーの基盤が見えるよう透明のピックガードが採用されていたり、ボディーサイドに15周年を記念するメダルが並べられていたり、ノブにオニキスが埋め込まれていたり、もうとにかくレギュラーラインのテレキャスターとは一線を画すとんでもないカスタムギターです。

その選択には理由がある

いかがでしたでしょうか日本が誇るサムライギタリスト「MIYAVI」の使用ギター遍歴。彼が相棒を選択するのには必ず理由があるようです。それはサウンドのこだわりであったり、機能面での選択であったり、時にはファッションとの融合であったり、変幻自在に進化していくサムライギタリストの自由なスタイルに合わせて精査されているようですね。

常に最先端のサウンドを求め日本音楽界を牽引する彼が、次にどんなギターを選ぶのか全く見当もつきません。しかしそれは彼が次にどんな音を目指していくのかを表しているはずです。これからも世界中をまたにかけるサムライギタリストの活躍から目が離せません。

Ram's Head
DEEP DIVER編集部の中で最も機材愛が深い男。作曲や編曲などの仕事もしているらしいが本人曰く“新しい機材を使いたいだけ”とのこと。大の犬好きで、猫アレルギー。好きな音楽のジャンルは特にないが、好きなトランスは“Marine Air”だそうだ。編集部にはまだこの男と話が合う者はいない。